今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 952)鍋焼きうどん

 

 

土鍋がピンチとの記事を読み、うーんと唸る。土を捏ねて焼くだけでしょ、なんて小学生の図工の知識で止まっているけど、実はレアメタルが使われているらしい。

 

なんでも、ベタライトと呼ばれる鉱石を混ぜると耐熱性に優れた強い土鍋に仕上がるのだとか。しかしこのベタライトは、電気自動車のリチウム電池にも使われるのだ。

 

わが国の窯業は中国あたりの需要に押されて、土鍋が作れなくなっているという。自宅に土鍋は持たないけど、わが愛する街そばの「鍋焼きうどん」がピンチである。

 

そう思ったらいてもたっても居られず、肌寒くなった季節だし、鍋焼きうどんを食べにゆく。むしろ使用頻度を減らし、鍋の寿命を延ばすほうがいい気もするけれども。

 

まずはグツグツと地獄の池のように煮え立つツユから、黄身を取り皿に移し、すき焼き風のつけだれに仕上げる。すでにくたくたのうどんをいく筋かつけてすすり込む。

 

甘いツユと濃い黄身のコクが奇跡のマリアージュ。申し分ないおいしさに、使い古された表現だけどほっぺが落ちる。しばらく夢中でうどんを食べ進め、水で一息つく。

 

少し熱気が弱まるいい頃合いに、次々と取り皿に具を取り分ける。たっぷりとツユを吸ったお麩を舌で潰すと当たり前にツユが滲み出てきて、少しヤケドするのも一興。

 

クニクニのナルト、プリプリのかまぼこは色も食感もいいアクセント。海老天の衣は油をツユに与え、ツユから甘みを吸い込んでいる。ひと口かじれば旨みがジュワリ。

 

身はしっかり茹で上がりがおいしい。こうなると、尻尾までおいしく頂いちゃう。やがてツユの情熱が落ち着いたころ、うどんを最後のひと筋まで食べ終える。うまし。

 

美味しんぼには、よく使い込んだスッポンの土鍋は単なるお湯でも旨みが滲み出るなんて挿話があったけど(笑)。土鍋文化はおいしく、楽しいので、残って欲しいな。

 

ごちそうさまでした。