昨年暮れ、土鍋の材料となるレアアースであるペタライトの不足が報じられた。なんでもEVのバッテリーの材料らしく、中国企業がジンバブエで買い占めているとか。
家庭ではカセットコンロ&土鍋の代わりに金属製の鍋をつつくことも多い。しかし、味噌煮込み、鍋焼きうどん、居酒屋の小鍋仕立てのもつ煮込みなどはどうするのか。
個人が食べ支えたところで、レアアースの需給までには届くまい。味噌煮込みは専門店があるけど数が少ない。せめて冬場にそば屋で鍋焼きうどんを積極的に食べよう。
鍋焼きはうどんに味がしみやすいからか、関東でも関西風のダシで出す店が多い。しかしこちらは、関東風のしっかり濃いめのツユがグラグラ煮えており、ニンマリ。
熱さに負けぬよう七味を多めに振る。レンゲでとんすいに卵の黄身を取り分け、前半はすき焼き風に食べるのだ。うどんをいく筋か持ち上げ、黄身をまぶしてズルズル。
やわらかなうどんにツユがしみて、なんとも言えない優しさ。煮えごろの水菜がシャキシャキ歯ごたえよく、おでこにジワリと汗をかきつつも、ふうふうと食べてゆく。
カマボコとナルトは似たような食感だろうと思うけど、実際に食べるとカマボコはプリプリ、ナルトはモチモチと舌ざわりが全然違います。さて、メインの海老天をば。
ぽってりとツユを吸っているので、持ち上げてかぶりつけばヤケド間違いなし。鍋の中で衣を剥がして、とんすいでミニたぬきうどんをこしらえて、しばらく楽しむ。
身ばかりになった海老を持ち上げ、尻尾の際までかじりとれば、みっちりした食感が頼もしい。尻尾は好物だけど、喉に刺さる事故が多いときいて、泣く泣く自重です。
あらかた食べ終え、鍋底に眠る麺や衣をレンゲで掬い上げる。七味がきいており、舌も心も躍るように大満足です。「守りたい 鍋焼き文化 いつまでも」(心の俳句)
ごちそうさまでした。