牛すじや各種モツなど内臓は、牛1頭の命を余すところなくいただくという気持ちになる。どことなくエコ、丁寧な暮らしといった響きで、いつもより背筋が伸びる。
「余すところなく」という言葉は、伝説の大映ドラマ・スクールウォーズのナレーションが初耳である。テレビが娯楽の王様だった頃、毎週家族で楽しみに観ていたな。
「この物語は、ある学園の荒廃に戦いを挑んだ熱血教師達の記録である。(中略)その原動力となった信頼と愛を余すところなくドラマ化したものである」ーー泣けるな。
牛すじうどんを待ちながら、そんなことを思う。脳内BGMには麻倉未稀のHEROが流れ、この寒いラグビーシーズンにこそ、温かいうどんが似合うのだと興奮する。
牛の腱を煮込んだすじは、コラーゲンたっぷりで健康にも嬉しい。店のお母さんから恭しく丼ぶりを受け取り、まずはツユを匙でゴクリと。いつも通り、甘めの味つけ。
ホッとしたところで、牛すじを1つ口に放り込む。少しサクサクして、プルンとした舌ざわり。串に刺さったおでんのタネと異なり、キャンディのような丸さが楽しい。
七味をふってうどんをすする。はふはふ、ズルズル、おいしい。愛を口移しに教えてあげたい、とはHEROの歌詞だけど、すじのおいしさは口移しでよくわかります。
うどんというと、昆布ダシで食べる関西風や喉越しを楽しむ讃岐うどんが流行りだけど、やはり、甘辛いツユの関東風もおいしい。胃が温まった頃、すっかり完食です。
ごちそうさまでした。