インド料理に陳建民は現れるだろうか?
何を言いだすのか。アンドロイドは電気羊の夢を見るか?のような深い意味があるのだろうかと思われそうけど、そのまんまの意味である。
「私の中華料理、少しウソある。でもそれいいウソ。美味しいウソ」とは陳建民の言葉である。彼は日本に四川料理を広めるなかで、巧みにローカライズを行ったのだ。
アレンジメニューとして、回鍋肉にキャベツを入れる、担担麺を汁ありとする、エビチリにケチャップを使うなど、大胆かつ日本人の口に合うように見事に定着させた。
さてこちらは本格派インドカレー店。映画RRRを観てから勝手にインドに親近感をもっており、セブンイレブンでインドの炊き込みご飯ビリヤニが人気なのも嬉しい。
ビリヤニ・ターリーとして取り扱いはあるけど、サービス満点で量が多いのよね。胃具合と相談して、3種のカレーにナンがついたジャンタ・ターリーを選びます。
毎回意味を忘れるけど、調べればヒンディー語で「公共の大皿」、日本語でいうところの大衆定食といえようか。ナンカレーは典型的なインド料理と思っちゃいますね。
ところがナンは発酵が必要で、カマドがないと焼けないので、地域や家柄が限定されたメニューだとか。同じパンならチャパティのほうが庶民的で広く食べられている。
かつての中華料理がそうであったように、インド料理は家庭ではなかなか作らない。中華における陳建民のような人が現れて、もっとインド料理を身近にしてほしいな。
それが冒頭の「インド料理に陳建民は現れるだろうか?」である。そんなことを思いながら、到着した3種のカレーを味見分する。どれもカレー。でも個性はきわだつ。
左から、
茶色。すぐに辛い。チキンがほろほろ。
黄色。後で辛い。ニンニクがきいてる。
赤色。色合いよりも辛い。豆たっぷり。
こうみると日本各地の味噌汁のように、味や具材に変化があるのだと思う。単独で食べてもよし、ふかふかで焼きたてのナンをつけるとじっくりと味の違いがわかる。
わが国で好まれるスパゲティだって、イタリアでは前菜であるパスタを切り分けて主食としたわけで、日本人は、良くも悪くも、無自覚にローカライズを楽しんでいる。
それにカレーライスはインドではなくイギリス経由で広まった料理で、しかも日本風カレーが「カツカレー」と名づけられイギリスで人気というから、もはやカオスです。
地政学的に大陸の端に浮かぶわが国は、大陸伝来のもの、海上交易で広まるものが、本来あるべきタイムラグなく伝わるから、混沌とするのか。などと考えつつ食べる。
小難しいことはさておき、ナンカレーはおいしい。どこで食べてもハズレないのは、そもそもの料理の水準が高いのだろう。壁のガネーシャに見守られつつ、完食です。
ごちそうさまでした。