表面はカリカリに焼け、フォークで切れば肉汁がジュワーっと。ほどよく赤みの残った肉をかみしめれば、旨味があふれる。
ハンバーグというと、いつの間にやらそんなイメージ。間違ってない、むしろ正しい認識。でもハンバーグの原体験ってそんな素敵なものだっけ?
昭和の子どもとしては、イシイのおべんとクンで十分ごちそうだったなぁ。食が細かったけど、うれしくて、タレをご飯にまぶして食べたっけ。
母親がつくるハンバーグも懐かしい。豚肉に赤みが残るのを許さない母は、とにかくハンバーグを煮込んだ。
焼き目などない、旨味はスープに溶けだす、それでも赤みを除くことが最優先されたハンバーグ。
スープにケチャップを入れて煮つめるので、旨味がすべて抜けるわけではない。でも、肉汁ジュワーは高級レストランの秘儀、幻の技だと思っていた。
さて、前口上が長くなりましたが、ランチメニューの煮込みハンバーグにそんなことを想う。
両親ともに魚好きだったから、わざわざ子どもの好みに合わせてくれてたんだなぁとしみじみ。
ではでは、まずは赤だし。ダシがきいて、豆味噌らしいほろ苦さがたまらん。箸を湿らせたところで、キュウリの漬け物でご飯をひと口。滋味、滋味。
お次はベジファーストで野菜サラダを半分ほど。しそドレッシングがきいてます。あと半分はハンバーグのソースに飽きたときのお口直し用。
さて、メインのハンバーグ。スプーンでパッカリと半分に割ると、均質に火の通った美しい断面。
ひと口大に切り分け、ドミグラをつけてパクリ。日本料理じゃないのが嘘のようにご飯に合う。
付け合わせのポテトにもドミグラをつけてカリカリ食べる。こいつぁ、ご飯もいいけどビールが合うだろうねえ。
ドミグラをまぶしながらハンバーグを食べ、追いかけるようにご飯を口に入れ、ひたすら噛む。時に漬け物や味噌汁をはさむものの、基本はハンバーグご飯。
煮込まれて、肉団子っぽくなっているのが、かつての家庭の味が思い出されておセンチになる。
おふくろの味なんて言葉はウェットで好きではないけど、舌に刷り込まれた記憶は取り除けないネ。
大根おろしに明太子という、世が世なら主力となりうる小鉢も嬉しい。チビチビ食べたご飯がさらに足りなくなるゥ。
さて、お口直しにサラダを片づけ、最後は漬け物とご飯でしめる。
良くも悪くも、におい、音、味なんてのは記憶を取り戻すトリガーとして優秀ですね。昼間っから昔語りがしたくなりました。
ごちそうさまでした。