ウチの親は古い人間なので、肉類にそれはそれはしっかりと火を通した。トンカツは小さく、ステーキはウェルダン、ハンバーグならば煮込む。
戦中生まれの感覚では正しい。コールドチェーンなんて考えもない頃、魚は港から直送できても、肉はそうもいかない。地獄の業火で焼き尽くす。
で、大いにその影響を受けて育ったのがワタクシ。店ならまだしも、自分で焼いたハンバーグなぞ信じない。レア感なぞ微塵も残さないのダ。
まずは合挽き肉に、軽く塩コショウ。パン粉をまぶしたら、軽くこねる。全体がまとまったら、生玉子を加えて、滑らかになるまでこねていく。
なんというか、チベタイ。早めに冷蔵庫から出しておいたのに、まだまだチベタイ。堪え難きを堪え、小判型に整えて、真ん中をくぼませる。
片面に軽く焼き色をつけたら、ひっくり返して蓋をして蒸し焼きにする。本格派は店で食べれば十分で、わが家では、よく焼き蒸し焼きが安心さ。
あとでソースにするから、肉汁はこぼしても構わない。とにかく火を通したいので、爪楊枝で刺しては、出てくる肉汁が透明になるのを待つ。
およそ焼けたところで、ハンバーグを取り出してケチャップとソースを大量、しょう油少々、タバスコ 2、3 滴、おろしニンニクを入れる。
あとは強めの中火で煮詰めていけば、肉汁の旨みを吸いつくしたソースができあがる。皿に盛りつけたハンバーグにスプーンで回しかければ完成。
箸で割れないくらいカッチカッチだけど、肉質はギッシリ。炊き込みご飯、赤だしとともにガツガツ食べていくのが、自宅洋食の醍醐味ですナ。
娘には好評で、ご飯をおかわりして、どう食べていくかのロードマップを嬉々として説明してくれる。うんうん、喜んでくれれば、父も本望だ。
何というか、何十年後に「わが家のハンバーグは火が通っていてカッチカチだったなぁ」と思い出すときがくるのさ。そう、今日の父のようにね。
ごちそうさまでした。