ハンバーグといえば、湯気たちのぼる鉄板、ナイフを入れるとあふれる肉汁、肉の旨みと香ばしさが味の決め手。そんなファミレスのステレオタイプが浮かぶ。
かつて家庭のハンバーグといえばマルシンだった。牛肉自由化後に、食卓に上ることも増えたけど、合い挽きとはいえ、牛肉入りなんて贅沢であった。
魚好きの両親だったからか、昔の流通や保存が頼りなかったからか、わが家のハンバーグはとことん火を通した、カッチカチの煮込みハンバーグだった。
定食屋の黒板メニューの「煮込みハンバーグ!」の文字をみかけて、もう二度と食べることのない実家のハンバーグが思い出され、否応なく吸い込まれる。
で、やってきたのはそこそこ大ぶりなハンバーグ。箸がスっと入るほどやわらかくて、断面をみると玉ねぎがたっぷり。ソースをまぶしてパクリとひと口目。
ドミグラではなく、ケチャップベースらしいソースは心地よい酸味で、牛肉の旨み、豚肉の脂っ気、玉ねぎの食感と相まってオカズヂカラは十二分です。
急ぎご飯をかきこんで、口内調味という名の幸せを堪能する。無の境地とまではいかないけど、心のなかは旨の一文字でいっぱいです。ここでお茶をズズっと。
付け合わせのキャベツには、あふれたソースをよくまぶし、シャクシャクと食んでゆく。ポテサラはねっとりと濃密で、ビールが欲しくなるクオリティ。
ハンバーグとご飯の残量を判断しつつ、小松菜のおひたし、ワカメたっぷりの味噌汁などを間にはさみ、再び旨の境地に至る。いま、つくづく自由だと思う。
実家は、小判程度の小ぶりなハンバーグで肉汁はすべて鍋にあふれ出し、そこにケチャップやウスターソースを入れて、ハンバーグソースにしていたっけ。
今度の週末につくってみようかな。それならコーンスープと粉ふき芋を付け合わせにしなきゃ、などとウキウキしつつ完食。懐かしく、おいしいランチです。
ごちそうさまでした。