そばの名前にはヒネリがある。天ぷらのタネ抜きで「たぬき」、稲荷の好物だから「きつね」、満月のようだから「月見」。遊び心に満ち満ちている。
で、これも何度でも書くけど、たぬきが月見をするならば「証城寺」でよいのではないだろうか。揚げ玉が玉子に絡む相性のよさかはたまらない。
で、券売機には「たぬき玉子」が用意されている。「きつね玉子」が見当たらないことからも、やはり「たぬき玉子」の愛好家は多いのだろう。
久しぶりの朝そばだな。今日は忙しそうだというか、気合いを入れたい日の朝にお腹を温めるのが安心する。もり、冷やしではなくかけなのヨ。
まずはまん丸な月を愛で、やおら丼ぶりを持ち上げ、徐々に火が入り白雲となりゆく白身をツルンと吸い込む。ツユの味がほんのりしみておいしい。
そばをいく筋か黄身にのせて、後半戦の楽しみに温めておく。ここで、そばをズズズと食べ進める。わざわざ更科に変更した甲斐はあるな。
濃いめ、塩っぱめのツユに負けないそばの香りが素敵やん。そばとともに口に飛び込む揚げ玉は、桜エビや春菊のカケラなどイロトリドリ。
サク、フニャ。歯触りもさまざまで楽しいな。半分ほど食べたところで、箸で黄身をひと突きすれば、トロリとした味わいは、まるでそばボナーラ。
ズルズル、ハフハフ。ネギのショリショリもいとをかし。たぬき玉子にハズレなし。名無しはもったいないから「証城寺そば」がふさわしいな。
ごちそうさまでした。