何にでも見境なく飛びつくのは、人の世ではあまり上品とはされない。思慮深くエレガントに振る舞うのが望ましく、若さゆえの血気も、時と場合によりけり。
で、簡単に釣れるハゼ類から、何にでも飛びつくさまをダボハゼと揶揄する。ハゼ自体は江戸前の天ぷらにもなる上品な魚だけど、えらい損な表現ですね。
はぜ天は江戸前の天ぷらにはあるけど、そば界隈、立ち食い界隈にはあまりみられない。お上品さやら、食べごたえ、流通面などいろいろ裏があるのだろう。
こちら立ち食いの老舗では、通年ではぜ天が食べられる。ありがたい限りで、たまに食べると自分が大人になったような錯覚におちいる。今日がその日だ。
ダシのきいたアツアツのツユをゴクリ。カツオがハゼの脇役に回っていますが、それもまた味わいのうち。茹でたてのそばは香り高く鼻に抜ける香りを楽しむ。
はぜ天は淡白で、天ぷら油とダシの旨みと調和して、そばのほのかな味わいとトーンが揃っている。七味をいくらか振ると、全体がまとまって、嬉しい限り。
それこそダボハゼのように、そばをかきこみ、ワカメを喰み、ネギを咀嚼して、最後にはぜ天の尻尾まで食べちゃえ。水を飲み干し店の奥に下膳したら大満足。
ごちそうさまでした。