残暑が緩んだので、胃に刺激がほしい。激辛とはいわないまでも、夏バテに喝をいれるようなヤツ。カレーがいいかな、昭和っぽい、そこそこの辛さがイイな。
こういうときは、欧風、ココイチ、印僑などではなく、昔から舌が馴染んだそば屋や街中華のカレーが食べたい。そんな思惑のなか、街中華のノレンをくぐる。
気持ちは決まっているけど、お茶がつくなり注文するのも、がっついたようで気がひける。メニューをいちおう開いて、いかにも考えたふりをしてみる。
季節も終わりがけの冷やし中華の誘惑に打ち克ち、初志貫徹です。老舗の街中華はテレビが点いているんだけど、不穏なニュースばかりなのが残念です。
ほどなくやってくるカレーライス。専門店とは異なり、注文を受けて都度つくるカレーは、いわばオートクチュール。ムフフと笑みつつ、スプーンを握る。
カレーソースとご飯の分水嶺から、そっとよそったひと口のおいしさたるや! 中華スープにカレー粉を加えたソースは、もったりとして嬉しい限り。
具材は豚肉と玉ねぎだけのみ。シンプルなだけに、それぞれの役割がよくわかる。真っ赤っかな福神漬けの甘みが、ちょうどよいアクセントになってます。
ジワリと汗をかきつつ、丁寧にスプーンを操り、ソースもご飯も残さぬように食べ尽くす。火照る体を麦茶で鎮めて、日の高い街へと戻ってゆく。
ごちそうさまでした。