実家のコロッケは俵形だった。クリームコロッケにありがちな円筒状で、じゃがいもと挽き肉、玉ねぎが入っていた。もう食べることのできない、懐かしの味。
高校のころ、部活帰りに立ち寄った肉屋で食べたコロッケが平ったくて驚いた。家で母親にきくと「平べったいと、崩れやすいから。お母さん、不器用で」と。
高倉健のような答えだけど、なんか悪いことを尋ねたような気がした。名誉のためにいっておくと、母のコロッケはどこに出しても恥ずかしくない味だった。
そんな感傷に浸りつつ、コロッケそば。これでいいんだよ、という茹でおきの麺に、黒っぽくいいツユはまさにザ・立ち食い。七味をふってズルズルすする。
やわめのそばは、甘みのあるツユとよくからむ。シャクシャクしたネギがアクセントになり、コロッケの油が滲み出たツユが味に深みを増しています。
ここでコロッケをひと口かじると、カレー風味で、じゃがいもがムッチリした舌触りで嬉しいな。衣はあまりダシを吸ってないけど、どういう理屈だろうか。
ともあれ、堅牢なコロッケをかじりつつ、そばをやっつける。衣がチクチクして、ご飯が欲しくなる味わい。おにぎりを頼めばよかったかな。
店員さんが年配の女性なので、つい実家のコロッケを思い出しました。そばに入れたら、すぐにほどけてしまいそうな、やわらかくて、おいしいコロッケを。
ごちそうさまでした。