年越しそばは、江戸時代から続く習慣らしい。由来はさまざまに言われているけど、今も残るということは、現代人の気質にもうまく馴染んでいるのだろう。
自宅では毎年、温かい鴨つけそばで年越しをする。冬に脂ののる鴨と、普段よりちょっと贅沢した麺つゆ、同じく少しお互いそばで、そば湯までいただく。
で、2022年の年忘れベストそばは、立ち食いの肉玉そばでした。おいしいとか、コスパではなく、立ち食い派の心を揺さぶられる味わいなのです。
再開発でなくなったと思っていた立ち食いそば屋が、キレイなビルの一角にまさかの再臨。そんなストーリー性に加えて、パンチのきいた味がたまらない。
お気に入りは肉玉そば。口頭で注文すると、店員さんが復唱とともにそばをつかみ、ゆがき始める。水を汲んで、カウンターの隅を陣取るころに、出来上がり。
七味をパッパとふりかける。アツアツのツユで玉子が固まる前に丼ぶりに口づけて白身を飲み込んじゃう。ツユの濃さをまとった白身のなんとまろやかなこと。
そばは茹でおきだけど、これがいい。
豚肉は臭みがあるけど、これでいい。
七味がやたらきくけど、これでこそ。
ツユはしょっぱいけど、これでなきゃ。
夢中ですすれば黄身に熱が入ってくる。黄身を箸で突き刺せば、トロリ溶け出す濃厚なコク。それをからめてすき焼き気分で残る肉を頬張れば、いうことなし。
スツールもない、純正立ち食い店も少なくなりました。貴重な漢メシだけど、立ち食い店のサイクルは速い。余韻を水で打ち消して、熱気を帯びて店を出る。
今年も一年健康でいられたこと、いつもお値段以上の食事を出してくれる飲食店、いろいろありながらも平和な日本。各方面に感謝しつつ、年を越してゆく。
ごちそうさまでした。