ヒレというと、牛や豚ならテンダーロインとも称される最高級の部位である。やわらかな赤身肉で、関西ではヘレともいう。グルメ垂涎のおいしいイメージがある。
あるいは、魚の3枚におろした切り身をヒレとかフィレとか呼ぶ。わかりやすい例でフィレ・オ・フィッシュがありますよね。因みにマックは関西ではマクドともいう。
閑話休題。それとは全く別に、魚のヒレを食べる文化がある。鮎とか、鰯とか、丸ごと食べるついでではなく、ヒレだけを愛でるわけで、なかなかに興味深い。
思いつくのは、乾きものの定番エイヒレ。独特の歯ごたえはもちろんのこと、七味をふったマヨネーズとの相性も抜群で、若き日の酒の肴には欠かせなかった。
ほかにフグのひれ酒なんて変化球もあるけど、やはり王道はフカヒレだろう。サメのヒレを乾燥させるなんて発想がどこから出たものかわからないけど、珍味である。
ツバメの巣、アワビなどと同じ「中華料理の高級食材」といった心の引き出しに入っているフカヒレ。インスタントを食べたことはあるけど、マロニー的な食感でした。
かの長嶋茂雄は、後楽園の黄色いビルの中華料理店からフカヒレラーメンを出前したときく。私が食べたインスタントとは異なり、フカヒレの姿煮がのったやつですね。
前口上が長くなりました。本日のランチはふかひれうどん。やってきたのは、あんかけがトロリとおいしそうなひと品で、スープを飲めば不思議とフカヒレの味がする。
フカヒレ自体は無味無臭であり、ようはそれっぽい中華スープの味を堪能しているわけである。不思議な感じですが、正直いってクノールの企業努力の勝利だと思う。
ともあれ、スープ全体に散りばめられているであろうフカヒレを、うどんとともに味わう。アツアツのうどんはひと口ですすり切る前に、唇が悲鳴をあげるほどです。
匙にうどんを取り上げ、ふうふう冷ましつつ食べる。たまに出くわすタケノコやしいたけの食感に驚きつつ、ぽってりスープに潜んでいるであろうフカヒレを堪能する。
フカヒレを余すところなく食べるなら、スープを一滴残さず飲むことになるけど、洗面器大の器をみるに叶わぬ願いですね。腹具合と相談しつつ、半分ほどで断念。
ごちそうさまでした。