今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 902)田舎そば(もり) in 高幡そば

 

出来心でナミダ巻を食べたことがある。旅先の金沢の回転寿司で、おいしい魚がいくらでもあるのに、魅入られたように頼んで、すべからくナミダを流して苦しんだ。

 

ナミダ巻とは、ようは具がワサビだけの巻物であり、ワサビとノリの風味を楽しむ通好みの寿司である。酒のほそ道で読んだことがあり、一回は試してみたかったのだ。

 

ナミダの数だけ強くなれるわけもなく、向き不向きを覚えたわけです。そう、激辛がメニューにあるからといって、誰しもが食べ切れるものではないのと一緒ですね。

 

さて、本日は田舎もりそば。野趣あふれる挽きぐるみの太めのそばを、ツルリといただこうという寸法です。薬味のネギとワサビをツユに入れ、そろそろとかき混ぜる。

 

そばをいく筋か取り上げ、ツユをつけて手繰れば清涼な味ながらやや薄め。ふた口めはどっぷりツユにつけてすすり込む。と、そこには溶けきらなかったワサビの塊が。

 

鼻腔を突き刺すワサビの刺激は想定外で、軽くパニックを起こす。水を飲めどもワサビの揮発性の刺激がおさまるまでは焼け石に水。そばを味わうどころではなくなる。

 

覆水盆に返らず。また、溶いたワサビ元に戻せず。おそるおそるそばをツユにつけては、ゆるゆると口に押し込んでいく。チューブっぽかったけど、こんなにキクのか。

 

敗北感を覚えつつ、粛々と嚥下していく。そもそもワサビはツユに溶くのではなく、そばに少しずつつけながら食べるものだという蕎麦通の主張を体で思い知りました。

 

ワサビさんは胃も刺激するようで、食べているそばから膨満感が半端ない。濃厚ワサビゾーンを終えてもなお、ツユは全体に辛く、自らの行為に恐怖しつつ食べ終える。

 

こんどは、気をつけて味わいにこよう。

ごちそうさまでした。