冷やし中華は、本場中国にはない、いわゆる和式中華である。焼き餃子、天津飯、中華丼など、日本にカスタマイズされた中華料理のなかでも、季節感は特筆に値する。
和式中華だからなんでもアリ、ともいえるけどある程度の様式美はできている。冷たくしめられた中華麺、やや酸味のきいたスープ、色とりどりの具材たちが三本柱。
スープがゴマダレだったりすることもあるけど、大きく個性が出るのが具材ですね。個人的に錦糸卵、ハム、きゅうりあたりは外せないと思うけど、正解はないのだ。
こちらは、80代の老夫婦が営む甘味処兼お食事処。ゆえに変に攻めていない、伝統的な冷やし中華がいただけます。およそ1年ぶりの再会を祈念して、楽しみに待つ。
現れたのは最大公約数的な、教科書に載っていそうな冷やし中華。放射状に盛りつけられた具材は美しいけど、食べるうちに儚く崩れてゆくのだ。まずはカラシをとく。
こんなにスープがなみなみ入っていたっけか。記憶は曖昧だけど、写真フォルダを探っていては麺がのびる。まずは目の前のひと皿に集中して、ズルズルと麺をすする。
ゆるやかなウェーブの細麺が、冷たくやや酸っぱい中華スープとよく似合う。具材をみれば、レタス、トマト、きゅうり、錦糸卵、ハム、ナルト、わかめ、ワカメなど。
アクセントの紅生姜はもちろん、わずかなキクラゲも見逃さず食べてゆく。個人店ならではのサービスのよさはうれしい。いったいオーソドックスな具材とは何だろう。
大手チェーンである日高屋の冷やし麺と共通しているのは、きゅうり、ワカメ、錦糸卵、ハム、紅生姜、あとはカラシ。どうやらこのあたりが基本的なところかな。
冷やし中華の発祥とされる神保町の揚子江菜館などでは、さらにタケノコやシイタケ、絹さや、エビなどが加わるけど、お値段も張るのでちょっと例外かもしれない。
涼を飲み込むように食べ、待ち時間よりも短い間に完食する。なみなみ残るスープがもったいなくてゴクリとひと口飲んでみるけど、ややむせこんで、慌てて水を飲む。
しあわせにかたちがあるなら、こんなかたちだよね。
ごちそうさまでした。