教科書には無味乾燥な文字が並ぶだけではない。一生を懸けた職業のきっかけもあれば、人生を豊かにする趣味、さらに単なる雑学、ネタのレベルまで玉石混淆である。
なかでも言葉の響きの美しさで忘れられない単語がある。禁中並公家諸法度、カノッサの屈辱、フレミングの左手の法則などなど。口に出して読み上げるとカッコいい。
これらは固有名詞だけど、マンガやゲームは創作なので、超究武神覇斬、魔貫光殺砲、夢想転生などさらにカッコいい。中二病と言われても、男の子はこんなもんです。
もちろん、食べ物にも文字面や響きがいかす料理がある。特にドイツあたりは硬質な言語の響きがいいですよね。ザウワークラウト、プレッツェル、アイスバインとか。
もちろん、わが国にも西京焼きがあるけどね(笑)。あと惹かれるのは中華料理、やはり漢字が並ぶと壮観です。馴染みがある文字だけど、意味がわからないのがいい。
長い前置きですが、本日は排骨酸辣麺(パーコーサンラーメン)。どちらかと言うと音の響きではなく、字面が美しい。もちろん、やってきた丼ぶりの盛り付けも然り。
豚の唐揚げである排骨と、酸味と辛味のきいた酸辣湯麺の合わせ技。食べる前からわかる、おいしいに決まっている。刻みネギに覆い尽くされたスープをチビリと味見。
うん、やっぱり酸っぱ辛い。元々のスープの旨みに、軽やかな酸味と、くっきりした辛味が重畳されているのだから、さもありなん。細麺をすすると、少しむせ込む。
本来は骨付き肉を意味する排骨、この場合は豚の唐揚げです。大好きな端っこはカリカリして、歯ごたえはサクサク。脳内快楽物質がドバッと出てくるのがわかります。
添付の黒酢を入れれば、さらにスープに深みが出てきて、卓上の粒胡椒やコーレーグスを振りかければ、味の万国博覧会……万国博覧会の字面もかっこいいですよね。
などと思いつつすっかり食べ終え、なお浮かぶ刻みネギをかき集めて咀嚼する。器の底を探れば、排骨が一片みつかって、やれ嬉しやと堪能する。食後のお茶がうまい!
ごちそうさまでした。