ゲソ。漢字で書けば下足であり、履き物から転じて足そのものを指すようになり、イカの足もゲソと呼ばれるに至った。煮てよし、焼いてよし、もちろん揚げてもよし。
そんなゲソですが、正式な天ぷら屋さんではあまりみかけない。まあ、正式な天ぷら屋さんにほとんど行きませんけど。ともあれ、ゲソ天の主戦場は立ち食いそばです。
しかし、ゲソだけのかき揚げは歯ごたえがありすぎてそばと合わない。玉ねぎやにんじんなどと一緒に揚げられ、ゲソは味と食感のアクセントとして活躍するわけです。
朝イチなので揚げおきもなく、注文するとつど揚げされるのが嬉しい。しばらく待てば、丼ぶりからはみ出すボリュームのかき揚げさま。恭しく受け取り、まずはそばを。
少し粉っぽい田舎そばは、濃いめのツユと相性バツグン。ズルズルすすると、そばもツユも熱い。そう、かき揚げがまだ熱をもち、ツユの温度を引き上げているのだ。
厚さ3cmはあろうかというかき揚げを持ち上げてガブリとかぶりつけば、玉ねぎの甘みとツユの塩味の対比がたまらない。熱いけど、中央のゲソまで食べ進めてゆく。
ゲソはクキクキと固く、潮の香りが熱で活性化されて、おいしいに決まってる。ゲソを咀嚼しているあいだはそばを小休止して、ひたすらに顎を使う。おいしいなぁ。
ゲソを飲み込んだのち、そばをすすっていると、ハラハラと玉ねぎがほどけていく。丼ぶりの表面は蓮の花が広がった池のようで、どことなくありがたく感じます。
かき揚げのカケラを箸で集めて、丼ぶりに口づけて一気にかき込んでしまう。まだ残るゲソをよく味わいつつ、ひたすら咀嚼する。最後に、残るそばを一気に啜り込む。
ごちそうさまでした。