今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 543)鶏の唐揚げ定食

 

 

どんなご馳走もおなかがふくれていればありがた迷惑である。逆に清貧な食事であっても、場面によっては何よりのご馳走となる。そんな当たり前のことを思い出す。

 

というのも、本日の鶏の唐揚げ定食に「岩手産鳥肉」と但し書を見つけたからである。ちなみに岩手は鹿児島、宮崎の次に養鶏が盛んで、国技館の焼き鳥も一関市室根産である。

 

奇縁もあって、岩手県には大学のころ延べ1か月滞在した。サークルの貧乏合宿は予算も少なく、食費はひとり300/日。ごはんと味噌汁、野菜が少々であった。

 

肉じゃがから肉を取り除いた「じゃがじゃが」がご馳走だったな。ごはんはおかわりできるので、わずかなオカズの塩っ気で、がぶがぶと食べたっけ。懐かしいや。

 

そんなある日、集落の方から地元でとれるという「ブロイラー」を差し入れしていただいた。普段ならなんてことのない唐揚げだけど、なんとまあ、おいしかったこと!

 

そんなわけで岩手の鶏には思い入れがあるので、楽しみに待つ。計算してみると、やませに凍えたあの夏から今年で30年なんだな。光陰矢の如しったらありゃしない。

 

まずは味噌汁で箸を湿らせて、パセリを喰む。ほろ苦さで舌を刺激したところで、唐揚げをほおばる。揚げたての唐揚げを前にして、ベジファーストなぞできません。

 

カシュ、ジュワ、ハフハフ。鶏の脂が口にあふれ、弾力のある肉の歯ごたえを楽しむ。口福が消えないうちにごはんをかきこみ、味噌汁をすする忠実な三角食べのしもべ。

 

文句なしにおいしいな。3040人の大学生が質素に自炊して腹を満たしたあの合宿を思えば、大概の外食はご馳走だけど、岩手産の鶏肉ならば、いつも以上においしいや。

 

思い出は必要以上に美化されるけど、もし1日だけ昔に帰れるなら、なんとなく過ごしたあの合宿の1日、紫煙と自然と友だちに囲まれた、気楽な時間に戻りたいな。

 

現実逃避はさておき、目の前の定食は確実においしい。もたれそうな胃も、ワカメの酢の物パワーでシャッキリポンと楽になる。しっかり栄養つけて、午後も働くのだ。

 

ごちそうさまでした。