今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 584)江の島丼

 

 

名物にうまいものなし。そんなことわざがある。しかし土地の味は、その土地で暮らしている人びとの口に合うように生まれているので、半分間違い、半分正解と思う。

 

風土の味というのは地理や歴史の賜物であり、土地の息吹を思えば決して無碍にできない。ヤギ汁とかイナゴの佃煮とか、意味のある食事にうまいもへったくれもない。

 

一方で観光地にありがちな、それっぽいメニューを出しとけば喜ばれるでしょう的な名物はやはり微妙である。名前はあげないけど、一見客なら騙されるかもしれない。

 

旅先の高揚感とともに食べた食事を、都内で食べたところであまりおいしくはない。やはり土地の空気とともに食べないと味気ない。そんな前振りののち、江の島丼。

 

こちら江ノ島も、人出が回復したようなので、ガツンと儲けてほしいものです。とはいえ、できればおいしい名物であってほしい。期待と不安がないまぜのまま注文。

 

ご丁寧にwikiのページがあるので読んでみると「親子丼の鶏肉がサザエの身に代わったもの」だとか。ただし、サザエはもはや江ノ島産ではなく、千葉県産が多いとか。

 

店内にはサイン色紙が多く飾られており、タレントが味の保証をするわけではないけど、つい期待してしまう。でも、気持ちのよい接客なので、すでに安心しています。

 

見た目はほぼ玉子丼で、海苔だけではないほのかな磯の香りがする。食べてみると、貝のダシがたしかに感じられ、しっかりとおいしい。名物にうまいものあり、です。

 

wikiによれば、江の島丼は明治末期〜大正頃に生まれたらしいので、観光用のなんちゃって名物とは一線を画するのだろう。夢中になって、飲むように食べてしまう。

 

メニューには、たたみいわし、しらすかき揚げ、カニの味噌汁など、いかにも磯料理といった魅力的なメニューが並んでいたので、機会があればまた食べにきたいな。

 

ごちそうさまでした。