若いころ、旅に出れば人波にまみれて名物料理を出す店を訪ねた。せっかくの機会だから「ハズレ」のない店に行こうと、ガイドブックをめくり、味を確認に訪れた。
それはそれで間違っていない。一期一会の精神でベストを尽くしたい。しかし、地域に根ざした、土地の空気とともに食べられているような食材には行きつかない。
地元のスーパーをのぞいて、東京ではみたことのない食材や、やたらと安い食材があれば「アタリ」。舌に合うかはさておき、それこそが地元で愛される食材である。
立ち食い界隈もまた然り。個人店はもちろん、沿線ならではの店もある。地元の人が常日頃食べているものに触れるのも、立派な旅情ではなかろうか。で、星のうどん。
相鉄の横浜駅に位置し、なぜか博多風うどんを出す星のうどん。横浜名物なら家系ラーメンやサンマーメンがあるのに、なぜうどんなのか。だって、おいしいんだもん。
もちもちのうどんと、丁寧にとられた薄口のダシ、卓上の生姜で味変して、ツルツルと食べられる。トッピングにいつも悩むところですが、本日は初めてとり天を選ぶ。
なんとなく、博多で食べていそう。むかーし博多に行ったときは、博多ラーメン、もつ鍋など「いかにも」なものしか食べなかったので、その反省もこめております。
食券を提出してほどなく呼び出され、カウンターで生姜を盛りつけてからうどんを席に運ぶ。生姜をとく前にまずはダシをゴクリ。昆布と各種の節の旨みが胃にしみる。
とり天はダシに浸かってしっとり。生姜醤油味が、淡麗なダシに似合う。よく考えたら、とり天は博多ではなく大分の名物だけど、まあいいや、これは横浜名物だし。
モムモムとうどんを喰み、途中で七味をふって味変して、とことん楽しみ尽くす。すっかり満足した胃をポンと叩いて、水を飲んで余韻を消し去り、相鉄に乗り込む。
ごちそうさまでした。
