今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 611)カツオ丼定食

 

「おれのカミソリシュートは二枚刃よ!」とは、キャプテン翼の早田くんの台詞である。キーパーの手前で鋭く曲がるカミソリシュートを止められたのち、こう叫んだ。

 

何のことはない、右だけでなく左にも曲げられるというのがオチなんだけど、二枚刃ってそういう意味じゃないけどな。ともあれ同じものに表裏一体の性質があるのだ。

 

話は微妙に異なるかもしれないけど、カツオの旬は年に2回ある。黒潮とともに春先に北上する初鰹は、江戸っ子の間で女房を質に入れてでも食べたいほど人気だった。

 

一方で親潮とともに南下する戻り鰹は、冷たい海にいたので脂がのっている。輸送技術のない時代では、脂っこいのは傷みやすく嫌われたが、今はおいしくいただける。

 

秋の風物詩・戻り鰹の丼ぶりを楽しみに待つ。それにしても日本人の食の好みもどんどん移り変わり、昔は捨てられたような大トロやハラミが好まれるようになった。

 

アラフィフとしてはマグロも牛も赤身がおいしく感じられるけど、やはり適度な脂分はクレ556のように体の錆を除いてくれる気がする。やってきたのは深い赤色が艶めかしいカツオ丼。

 

生姜をカツオに小分けにのせ、ひと切れ醤油につけてパクリ。ねっとりとした舌触りにうっとり。生姜と大葉が青魚のクセを取り除き、旨みだけが舌の上で踊り始める。

 

ベジファーストの野菜がないので沢庵とワカメの酢の物で代替する。最初はいちいちカツオに醤油を漬けて食べるけど、面倒になって小皿で一斉にカツオの漬けをつくってごはんに戻す。

 

減塩にはよくない食べかただけど、これで細かい動作を必要とせず、丼メシをかきこめるってもんだ。心のなかの江戸っ子、せっかちという一点のみの江戸っ子が喜ぶ。

 

じっくり味わいたいけど、味噌汁で流し込むのもまた快感。アサリの味噌汁をぶっかけた深川丼が流行るのも、江戸っ子ならでは、なんとなく粋と鯔背がわかります。

 

まあ、私は加賀っ子ですけどね。

 

ごちそうさまでした。