「おれのカミソリシュートは二枚刃よ!」とは、キャプテン翼の早田くんの台詞である。キーパーの手前で鋭く曲がるカミソリシュートを止められたのち、こう叫んだ。
何のことはない、右だけでなく左にも曲げられるというのがオチなんだけど、二枚刃ってそういう意味じゃないけどな。ともあれ同じものに表裏一体の性質があるのだ。
話は微妙に異なるかもしれないけど、カツオの旬は年に2回ある。黒潮とともに春先に北上する初鰹は、江戸っ子の間で女房を質に入れてでも食べたいほど人気だった。
一方で親潮とともに南下する戻り鰹は、冷たい海にいたので脂がのっている。輸送技術のない時代では、脂っこいのは傷みやすく嫌われたが、今はおいしくいただける。
秋の風物詩・戻り鰹の丼ぶりを楽しみに待つ。それにしても日本人の食の好みもどんどん移り変わり、昔は捨てられたような大トロやハラミが好まれるようになった。
アラフィフとしてはマグロも牛も赤身がおいしく感じられるけど、やはり適度な脂分はクレ556のように体の錆を除いてくれる気がする。やってきたのは深い赤色が艶めかしいカツオ丼。
生姜をカツオに小分けにのせ、ひと切れ醤油につけてパクリ。ねっとりとした舌触りにうっとり。生姜と大葉が青魚のクセを取り除き、旨みだけが舌の上で踊り始める。
ベジファーストの野菜がないので沢庵とワカメの酢の物で代替する。最初はいちいちカツオに醤油を漬けて食べるけど、面倒になって小皿で一斉にカツオの漬けをつくってごはんに戻す。
減塩にはよくない食べかただけど、これで細かい動作を必要とせず、丼メシをかきこめるってもんだ。心のなかの江戸っ子、せっかちという一点のみの江戸っ子が喜ぶ。
じっくり味わいたいけど、味噌汁で流し込むのもまた快感。アサリの味噌汁をぶっかけた深川丼が流行るのも、江戸っ子ならでは、なんとなく粋と鯔背がわかります。
まあ、私は加賀っ子ですけどね。
ごちそうさまでした。