街角のそば屋でラーメンを食べるのが好きだった。背脂だのWスープだの、そういった進化とは縁のない、素朴な醤油ラーメンが、歳をとった胃にちょうどよいのだ。
「だった」と書いたのは、ラーメンを出す街そば屋さんが減ったからである。それでも立ち食い系の富士そば、ゆで太郎などがいわゆるそば屋のラーメンを出している。
そんなファストそばの1つ、横浜駅構内にある濱そば。店前のポスターに中華そばをみつけ、心躍らせつつ自動ドアをくぐる。呼び出しを聞けば前客も中華そばらしい。
ほどなく中華そばと対面。シンプルな盛りつけに「コレコレ、こうでないと」と激しくうなずく。ゆるやかなウェーブの麺をすすれば、少しかためで腑に落ちる味わい。
少し油の浮いたスープは実にさっぱり。ごく薄切りの叉焼、ゴリゴリやクニクニが入り混じったメンマ、歯ごたえという概念のないワカメ。これで、いや、これがいい。
入口では店員さんが注文を厨房へ伝えている。耳が暇なので聞いていると、前も後も中華そば。実に6人のうち私を含め5人が中華そば。新作だし、気持ちはわかる。
古きよきチャルメラの時代は知らんけど、郷愁を誘う味なのは間違いない。スルスル食べればあっという間に完食、スープをひと口だけ飲んで、水で塩分を希釈する。
ごちそうさまでした。