配膳には、ルールがある。ごはんが手前の左、汁物が右、奥の左から副菜、副々菜、主菜と置かれる。ローカルルールはあるけど、わが国の左上位の思想が表れている。
なんなら魚の頭も左に向けるほど、考え方は通底されている。しかし、麺類や丼ぶりものには明確なルールはないので、なんとなく配膳されているのではなかろうか。
これがおかめそばなら、顔を模しているわけだから、上下ははっきりしている。ラーメンだと、奥にもやし、右手前にたまご、左手前にチャーシューが理想の配置かな。
さて、本日はにしんそば。置かれたとおりに食べようとすると、少し違和感がある。あゝそうか、身欠きしにんとはいえ、これでは頭が右に向いているのだ、と気づく。
しばし逡巡するものの、まあいいやと七味をふり、甘くて熱いツユをごくり。ふう、胃が落ち着く。にしんの端を箸でちぎり取って食べれば、キシキシと歯ごたえよし。
甘辛く炊かれたにしんは、ツユに味を滲ませつつ、ツユからもダシを吸う。にしんそばならではのハーモニーを味わいつつ、そばをすする。季節的に、新そばかしらん。
配膳といえば、実家では母親はちゃんと配膳していたけど、ごはんが右、味噌汁が左のほうが食べやすくて、勝手に変えていたな。そんなことを思い出し、少し涙ぐむ。
ごちそうさまでした。