今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

定食春秋(その 660)ぶり刺身定食

 

お刺身は、新鮮であればあるほどおいしい気がする。角の立つような刺身にわさびをのせて、醤油をちょっとつけて食べる。噛めば鼻腔に抜ける魚の旨みがたまらない。

 

学生のころ、宴会というと居酒屋のコース料理で、冬なら鍋、夏なら刺身盛りがメインだった。ところが、若さゆえ魚のありがたみがわからず、あまり手がつかない。

 

弾む言葉、盛り上がる宴会、少しずつ干からびるお刺身。真っ先にテーブルから消え去る揚げ物に比べて、あまりにもぞんざいな扱いの刺身たち。申し訳なかったな。

 

学生向けの格安コースだし、冷凍ものだったろう。でも今なら真っ先に手をつけて、なんなら大根のツマまで食べるのにな。歳をとらないとわからないことがあるな。

 

そんな思い出とともに、新鮮なぶりの刺身を頬張る。あまい脂が舌でとろけ、肉厚な身には歯がすうっと通る。醤油の塩っけとわさびの清洌な辛みがぶりを盛り立てる。

 

米、米っ。あわててごはんをかきこみ、ゆっくり咀嚼したのち、味噌汁で流し込む。ダシとあおさの香りが重畳して、思わずにっこり。大根のツマもおいしくいただく。

 

そういえば北陸地方では、タイやヒラメなどの刺身を昆布ではさむ昆布締めがありますね。少し糸をひき、歯ごたえもねっとりとして、熟成された旨みが味わえます。

 

でも、干物や酢締めと一緒で日持ちを考えての技法だから、新鮮さを追求する刺身とは方向性が違います。刺身はオカズヂカラが弱いともきくけど、んなこたぁない。

 

5切れのぶりと、小鉢、香の物で、はかったようにごはんを食べ終える。あらためて思うのは、新鮮な刺身のおいしさと、職人さんの技術、流通の進歩への感謝、感謝。

 

ごちそうさまでした。