世界のイカの漁獲量の3分の1を日本人が食べるという。飽食の現代、好物はイカです!という人も少ない気がするけど、わが国の食文化を語るにイカは欠かせない。
回遊するイカを追いかけて漁師たちが港町を転々とするから、遠く離れた土地なのに似たような風習が根づくという。同心円でも、東西でもない文化の分布は珍しい。
俗にイカ文化とも呼ばれるこの現象、大学のころ民俗学の教授が唱えていたので、あながち荒唐無稽でもないだろう。でも、私は無知なのか、イカをあまりしらない。
すぐに思い浮かぶのはスルメイカ。お次は富山でよく獲れるホタルイカ。あとは頭をひねって絞り出す…たしか、紋甲イカって回転寿司でみたことがある気がするな。
で、本日の紅白丼はマグロとスミイカ。不勉強だったけど、すぐにスミを吐くからスミイカらしく、関西ではコウイカと呼ぶとか。紋甲イカはコウイカの一種らしい。
なるほど。いちど食べたくらいでは覚えきれないな。考えてみればイカだけでなく、マグロだって何マグロを食べているのか、わかりそうでわからない。そんなもんだ。
やってきたのは、真紅のマグロ、艶やかな白のスミイカ、針のように刻まれた大葉のトリコロールが美しいひと品。色だけみるとイタリア丼だけど、純正和食ですね。
大葉の香りが強く主張し、和風ハーブの面目躍如といったところ。とりあえず、小皿の醤油にワサビを溶いて、くるりと回しかける。まずはマグロからいただこうかな。
おっと、かなりワサビがきいてますね。覆水盆に返らず、溶いたワサビは元に戻らない。エントロピーの法則を身をもって感じつつ、むせ込まないようにお茶を飲む。
ともあれ、色の濃いマグロは、赤身なので旨みがあるのにサッパリ。予想通りの味わいにご満悦。自然な流れで、ふた切れめはイカを試してみる。おっ、コリッコリだ。
想定していたねっとりではなく、意表をついた食感は、新手のホルモンのよう。噛むごとに甘く、旨みが滲み出てくるので、食べがいがある。ごはんとも、合いますね、
これは調理法なのか、元からなのかわからないけど、ここまで硬いのは魅力的。イカとマグロと大葉。それぞれの個性が遺憾なく発揮され、どう食べてもおいしい。
新たな食材との偶然の出会い。人生これだから面白いね。ザブザブとかきこんでも、イカの咀嚼に時間がかかり、いつもよりゆっくりのランチタイムを楽しめました。
ごちそうさまでした。