今日も 来て しまった

おいしく食べて、温かい布団で眠る。しあわせのかたちを考える日々の記録

麺喰らう(その 706)カレー南蛮そば

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カレーの粘度は、オノマトペのグラデーションである。シャバシャバ、さらさら、トロリ、ドロリ、もったり、と言ったところか。人によるだろうけど。


カレー南蛮に合うのは、個人的にはドロリかな。トロリだと食べているあいだにツユに溶けてゆく気がして。ドロリはごはんにしみないから、そば向きですね。


カレー南蛮を注文すると、いつも思い出すのは学食のカレーそば。カレーライスのソースを、かけそばにかけただけのシンプルな味わいが、自分の物差しになりました。


一方で、街そば屋さんのカレー南蛮はその店の個性が如実に出る。辛さ、スパイス感はもちろんだけど、具材、ツユとの相性など、二つとして同じものはない。


こちらのカレー南蛮は、豚薄切り肉、削ぎ切りの長ネギのシンプルながら十分な陣容です。全体にドロリとした粘度で、飛び跳ねの少ないタイプが嬉しい。


そろそろとそばをすすり、熱が入って甘みを帯びたネギを喰み、歯ごたえのよい豚肉をかじれば、ごはんが欲しくなる。しみじみ、理想形の南蛮です。


汗をかきつつ、水を飲みつつ、たゆみなく食べていく。片栗粉なのだろうか、最後までドロリとしたカレーは頼もしいやら、心強いやら、懐かしいやら。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 705)いか天そば

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団塊ジュニアにとって、イカ天といえば「いかすバンド天国」である。数々のミュージックスターを生み出した深夜番組で、相原勇の最盛期としても知られる。


当時高校生だっだっけな。FLYING KIDSBEGINなどはいまや大御所かねぇ。個人的にはJITTERIN'JINN、たまが好きだったな。何もかも懐かしい。


で、いか天そば。いか天という単語を実物よりも先に上記番組で知ったくらいで、一般家庭での天ぷらにはあまり出てこないけど、立ちそば界では大御所です。


さて、壁に居並ぶメニューをみれば、いか天もちくわ天も同じお値段で悩ましい。オジサンの懐具合なら両方トッピングできるけど、胃のほうがついていかない。


で、なんとなく五十音順でいか天を選ぶ。なす天、さつまいも天、春菊天など魅力的だけども、すべて五十音順の前に破れ去ってゆく。強いな、いか天。


こちらは、茹で置きそばを温め直す方式なので、提供まで実に早い。おかあさんの見事な手さばきに見惚れるうちに到着。七味を振って、まずはツユをごくり。


ダシの味もするけど、しょうゆの味しっかり効いた味わいは、ハッキリいって好みです。やわらかめのそばをすすれば、塩分が舌と 心を満たしてくれます。


お楽しみのいか天は、しっとりした衣がツユを吸い、ガブリかじればサクサクと歯切れがよい。幸せゲージがみるみる上がるのが自分でわかります。


店員さんは、おにぎりの持ち帰り客の応対もあり、日曜日とは思えない賑わい。ズルズル食べながら「相原勇も五十音順ではかなり強者だな」などと思う。


ごちそうさまでした。

定食春秋(その 420)メンチカツ定食

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メンチカツは意外性のオカズである。かじりついてはじめて、メンチカツと気づくことすらある。差別化のためか、ラグビーボール形をしていることも多い。


そのままハンバーグやミートボールになれる挽き肉に、衣をつけて揚げてしまうのだから手は混んでいる。それなのにイマイチ主役を張りづらいメンチカツ。


そもそも「メンチ」って使用場面が限定されますよね。挽き肉は「ミンチ」とも言うし、メンチカツ以外に用いられない独特の単語。「どんぶらこ」みたい。


ともあれ、メンチカツが主役のこちらの定食。他にもレギュラーメニューとするレストランがあるのだから、メンチファンは一定いるのだろう。私もだ。


https://socius-lover.hatenablog.com/entry/2021/03/26/070300


揚げたてのメンチは実においしそう。家ではつくらないけど、たまに食べたくなる味わいでは上位ですね。さらに上位互換のスコッチエッグもあるな。


まずは味噌汁で箸を湿らして、メンチをザクッと箸で割る。軽くソースをかけてひと口パクリ。玉ねぎがたっぷりで、間違えようのないしっかりしたおいしさ。


ハンバーグと異なる方向性で、ジューシーさではなくみっちり感がウリ。追いウスターをだぶだぶかけると、オカズヂカラも高くなり、にんまりしちゃうな。


世界のどこにもない、日本独自の洋食。ひとつの文化だなあと思いつつ、こうした市井の食の歴史を感じられる、平凡な日常に感謝する。


ごちそうさまでした。

定食春秋(その 419)そば屋のかつ丼

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かつ丼と聞いて思い浮かべるものは、トンカツと玉ねぎをダシと玉子でとじて、丼ぶり飯に盛りつけた丼ぶりでしょう。三つ葉があればなお嬉しい。


ところが、これは多数派の幻想。丼めしにキャベツ、そこにソースをくぐらせたトンカツ、なんて地域もあれば、ドミグラスソースをかける地域もある。


つまり、かつ丼とひと口にいえども群盲象を評するがごとく、同床異夢なわけです。しかし、そば屋のかつ丼と限定すれば、おおよそ同意が得られる。


ダシのきいたそばツユをベースに、サッと煮込まれて歯触りのよい玉ねぎ、半熟トロトロの玉子、それらを従え威容を放つトンカツさま。あゝヨダレが出そう。


で、こちらそば屋のかつ丼。何度か食べたけど、いつ食べてもおいしい。品切れもあるほどの人気者。まずは先付けをつまみつつ、登場を待ちわびる。


https://socius-lover.hatenablog.com/entry/2020/08/25/070700


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茄子煮、冷奴、お新香。ビールのジョッキがいけそうな立派な品揃え。しみじみ味わううちに、やってきましたマイかつ丼。ミニそばが、ニクイねえ。


三つ葉じゃなくて、水菜だね。彩りは文句なしだからどちらでもいいや。まずは端っこのカツをよけて、玉子丼を楽しむ。ダシの味がよくわかります。


さて、お次はしっとりカツをパクり。サクサクだけがすべてではないとわかります。豚肉のしっかりした繊維質を楽しみつつ、ご飯をかきこむ。


飴色の玉ねぎはサクサクで、汁物がわりにすするミニそばもおいしい。はっきりいってランチとしては食べすぎですが、おいしいは正義です、やめられない。


カツとご飯をバランスよく食べるのは難しいですね。なるべくカツを残し気味に食べてゆき、最後にひと切れ残したカツで米つぶをかき集めるのが流儀。


すっかりキレイに食べ終えて、お茶をすする。店員さんが、お盆にのった飴ちゃんを「持って帰ってね」とおススメしてくれるまでがこちらのランチ。


のど飴と、メントスを1つずついただいて席を立つ。午後の仕事に差し支えかねない量ですが、心の満足度はそれ以上。そば屋のかつ丼はおいしい、のです。


ごちそうさまでした。


麺喰らう(その 704)カレーそば

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給食っぽいカレーが食べたい。油断すると膜がはるような、黄色いヤツ。辛みはそこそこ、スパイスよりもソースが似合うような、そんなカレーが食べたい。


ところが、意外とこれが難しい。印僑の店は言うに及ばず、ココイチ、日乃屋などのチェーンも、街の洋食屋さんも給食っぽいカレーは取り扱いがない。


あえていうならば、そば屋のカレー。店によって、ツユに近い味だったり、カレールゥだったりいろいろだけど、懐かしさを覚えるカレーはそば屋にある。


で、こちらは立ち食いならぬスツール食いのお店。券売機をみるに、残念ながらご飯ものはないけど、カレーそばを選ぶ。南蛮を名乗らないのが、興味深い。


やってきたのは、黄色くはないけど、色合いにノスタルジーを感じるカレー。肉をひとつまみすると、給食というより、家庭のカレーかな、でもおいしい。


豚肉は適度な脂身で、ヒラヒラ肉をすすれちゃう。そば屋のカレーの玉ねぎは、つど煮ることが多いけど、こちらはずいぶんととろとろで甘みが出ています。


小ぶりなニンジンが入っていることから、ひょっとするとカレーソースは自家製なのかも。業務用だとしたら、お取り寄せしたいくらいのハイクオリティ。


ツユがはねないよう、ゆるゆると食べる。汁っぽくなく、適度な粘度でまとわりついて、ご飯が似合いそう。長ネギが煮込まれてないのが、非南蛮の所以か。


夢見た給食のカレーがボンカレーならば、こちらはカレーマルシェかな。惜しい、でもおいしい。久しぶりにツユを完飲して、汗をひとしきりかきました。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 703)厚肉玉そば in 豊しま


私は朝昼かまわずそばを食べる。汁物が好きだし、ラーメンより背徳感が少ないので、1週間食べないことがない。ところが、そば屋は猛烈に減っている。


会社の近くだけでも、ここ10年のスパンでみれば、20軒以上は閉店したと思う。後継不足、パイの奪い合い、原因はいろいろだろうけど、寂しいものです。


で、こちらはビルの再開発でなくなった立ち食いそば。56年経って、まさかの復活です。嬉しいやら、驚くやら。さっそく名物の肉そばを食べにゆく。


開店して程ないので店内はピッカピカ客はオジサンを中心だけど、肉そばの映えを狙ったのか若い女性もチラホラ。先払いして、丼ぶりを恭しく受け取る。


まずは黒いツユ。ダシはほどほどで、正しく塩っぱくてアツアツ。昼時なのでそばは茹でおきにさっと湯通し。ザ・立ち食いそばって感じ、これでいいんだよ。


以前食べた立ち食い店のうどんが「実写版赤いきつね」のようだったけど、こちらはさながら「実写版緑のたぬき」。立ち食いの矜持を感じる一杯にニンマリ。


https://socius-lover.hatenablog.com/entry/2019/08/18/072600


主役はもちろんそばだけども、もう一方の主役は丼ぶりからはみ出さんばかりの豚肉です。そばがアムロなら、肉はシャアと言っても過言ではないでしょう。


箸で持ち上げ、端っこをガブリ。適度に繊維質は残るけど、基本的にはそばに合うようにやわらかい。ツユに脂を滲ませつつ、ツユから旨味を吸い上げます。


たぬきもサクサクが実に嬉しい。熱いツユで煮える前に白身をチュルリと飲んだら、七味をサッとかけて一気呵成にそばをすすり、ガブガブと肉を食んでゆく。


ビールよりも芋焼酎が似合いそうな肉だなぁ、としみじみ思う。途中で黄身を割れば、そばにも肉にも濃厚な味わいが加わり、この世の果てのようなシアワセ。


しかし、イスのない正調立ち食い店なので長居は無粋。いつもよりも気持ち早く食べ終えて、水をガブリと飲み干して、丼ぶりを返却口へと下げました。


また来ます。ごちそうさまでした。

定食春秋(その 418)朝牛セット in 吉野家


取締役が暴言を吐いたとかで、吉野家界隈が騒がしかった。再掲するのも露悪的な発言だけど、要はインプリンティング吉野家ファンを増やそうという戦略。

言霊ってあるよなぁ。同じ内容でも、表現やTPOを弁えて、相手がどんな感情をもつか考えないと。ましてSNS隆盛のこの時代、周りがイエスマンだったかな。


まあ、吉野家の味に罪はなし。散歩の途中で吉野家をみつけ、久しぶりの牛丼なぞ。朝セットは基本が小盛で、オジサンにはありがたい。選べる小鉢は生玉子にしよう。


はじめて吉牛というか牛丼を食べたのは、30年以上前、高校の隣にあった吉野家だったな。カウンターで食べるのもはじめてで、あまりのおいしさに驚いたっけ。


回想する間もなくやってくる牛丼。箸を割り、肉をよけて、まずはタレのしみたご飯だけをかきこめば鼻に抜ける豊かな香り。これこれ、やはり牛丼は吉野家に限るよね。


味噌汁をすすれば、塩分過多にならないような絶妙な味わい。舌を試運転したところで、肉が相対的に多くなった牛丼に、七味ならぬ四味唐辛子をふりかける。


肉にかきこみ、ご飯を口内調味する。甘いタレに慣れたところで紅生姜でリセット。丼ぶりを半分食べた辺りで、再び味噌汁をすすり、醤油をさした溶き玉子をかける。


汁っぽくなった丼ぶりをもちあげ、玉子のコクを吸い上げた味を楽しむ。松屋すき家もおいしいけど、やはり舌に刷り込まれた吉野家の味には、本能が逆らえない。


上京したころ、吉野家の並玉味噌汁が贅沢だったな。マックのハンバーガーが100円で、学食が300円台だったしね。平成の吉野家を偲びつつ、令和の胃腸は満腹。


やはり牛丼=吉野家を植えつけ直すには、ひと世代かかりますね。女性客の獲得だけでなく、吉牛のレコンキスタを期待したいところです。変わらぬ味、懐かしかった!


ごちそうさまでした。

定食春秋(その 417)がんこちゃんセット in ねぎし

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牛タンを始めて食べたのは、上京してほどなく、大学近くの焼肉食べ放題の店で、先輩に「最初は牛タンからだな」と教わったときだった。


目の前で焼かれた肉を熱々のうちに食べることすら初めてだったので、牛タンのあまりのおいしさに、度肝を抜かれました。レバではなくタンだけど。


ともあれ、サクサクした歯ごたえ、適度な塩っけ、ジューシーな脂の香り。炭火焼きなら一層おいしく、かつヘルシーなタンはオジサンの今こそ強い味方です。


杜の都仙台は牛タンでも有名ですが、その実米国産が多いとか。だが、それがいい地産地消ではなく、一軒の店が始めたメニューが町の名物になる。


サクセスストーリーですよね。名古屋の台湾ラーメンとか、札幌の味噌ラーメンあたりに通ずるご当地グルメの1つのカタチ。ねぎし、久しぶりだ。


店に入ると、すでに炭火の香ばしさが鼻腔を満たす。においだけでお腹がすくなぁ。


さて、メニューはいろいろあれど、ランチでお得ながんこちゃんを選ぶ。赤身のタンを食べやすく薄切りしたがんこちゃん。Eテレの番組を思い出す。


さて、まずはひと切れパクリ。サクッとした歯ごたえ、脂の旨み、適度な塩味に、炭火の香ばしさ。追いかけるように麦飯をかきこむ。たまらんです。


麦飯は、素食、清貧といったイメージですが、こと牛タンに合わせるならば白米より麦飯。半分食べてとろろをかければ、ツルツルと飲み込める。


脇をかためるテールスープも淡麗ながらしっかりした味わい。これってネギを一番美味しく食べる方法なんじゃないかと思えてきましたよ。


牛タンとちえば、やたら辛い唐辛子味噌。ご飯おかわり自由の誘惑に駆られますがヘルシーを重視して自重する。あゝ食べて仕舞えばあっという間だ。


牛タン定食という完成された料理。胃袋具合によって量を調整するくらいで、世界中どこに出しても勝負できる気がします。最後に熱いお茶を啜る。


ごちそうさまでした。

麺喰らう(その 702)朝のかき揚げうどん in なか卯

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久しぶりの朝なか卯。朝麺が新価格となっている気がする。うどん280円、そば330円。立ち食い界隈にはない価格差ですが、今日の気分はうどんかな。


大体のそば・うどん店では、どちらを選んでも同じ値段ですよね。考えれば不思議なことで、どちらも仕入や手間があるのに、どういう理屈だろう。


ただしそば屋さんは「うどんで」と言わないと基本そばが出るし、一方でうどん屋さんはそばを取り扱わないことも多い。とかいう間に到着する。


「丼ぶりと京風うどん」を看板にするだけあり、なか卯のダシは掛け値なしにおいしい。ご自慢のうどんも、もっちり、ツルツルと喉を通り抜けてゆく。


別盛のかき揚げは揚げたてサクサク。箸で割ってかじりつけば、まずは油の旨み。咀嚼するうち、ごぼう、にんじん、玉ねぎ、かぼちゃの甘みがしっかり。


唇テラテラにしつつ、半分ほどは野菜の味を堪能する。同様にうどんもシンプルに半分ほど食べたのち、両者を組み合わせ、天ぷらうどんの完成です。


ON砲、AK砲など、一人でも怖いのに、コンビになるとさらに凄みを増す感じ。天ぷらの油がダシに旨味を、ダシが天ぷらに奥行きを与え合います。


やがて、モロモロ、ハラハラとかき揚げはほどけていき、うどんと一緒にすするうちにエビの風味が鼻を抜ける。何だ、きみもいたのか、とニンマリ。


おいしい時間もあっという間、さながら風の前の塵の如く。諸行無常を覚えつつ、丼ぶりに残るダシを、これまた半分ほど飲み干して、冷たい緑茶でしめる。


ごちそうさまでした。



定食春秋(その 416)ちらし寿司弁当

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ふと未整理写真フォルダにちらし寿司弁当が残っているのに気づく。日付は3月末だからお花見用に売られていたかな。彩り鮮やかで、思わず見とれる。


ひな祭りに食べるという印象からか、ちらし寿司は春が似合う。五目酢飯に、旬のタケノコや煮つけた椎茸が混ぜ込まれ、錦糸卵が菜の花畑のように耀く。


とか書いていると、あの甘酸っぱい酢飯が脳裏によみがえる。そうだよな、寿司っていうとちらし寿司だったよな。握り寿司はハレの日のご馳走だった。


黄色い袋の「すしのこ」をふりかけて、酢の気配に咽せ込みながら混ぜる。エビやマグロではなく、エンドウやニンジンで彩られる植物性のお寿司。


ちょっと醤油をかけたりして、お吸い物をズズズと飲む。持ち帰りや回転寿司のお陰で握りは身近になったけど、幼い頃の記憶はやはりちらし寿司だった。


甘い煮豆、ナスの煮物、つくね、ミニかき揚げ、白和え。日本酒が似合う、ちらし寿司弁当が最近売っていないのは、やはり季節商品だからだろう。


「今日はお寿司だよ〜」と声をかけて、集まった家人がちらし寿司をみて何というだろうか。試してみようかな、と大人のいたずら心が芽生えました。


ごちそうさまでした。